法人化はまだ早い?個人事業のままでいいラインを解説
個人事業主のままでいいボーダーラインはどこ?
「利益800万円になったら法人化した方がいいんですか?」・・・これよく聞かれるんですが、正直この数字だけが独り歩きしすぎな気がします。
今日は税率だけじゃなく、社会保険料や消費税(インボイス後の状況)まで含めて、個人事業主のままでいいラインを整理してみたいと思います。
1.「利益800万円」の根拠、実はシンプルな話
所得税・住民税と法人税、実効税率がどこかで逆転するという話です。
利益が800万円というか課税所得が900万円を超えると、個人の税率(所得税23%+住民税10%)より法人税率30%の方が低くなってくるので、ここが分岐点としてよく紹介されます。
ここが法人化するタイミングだと。
ただこれ、あくまで税率だけを比較した場合の話なんですよね。
厳密に言えば、所得税率は段階的に税率が上がるので、課税所得900万円の23%ではありませんし、(所得税は約150万円)
業種によって個人事業税が3%~5%かかります。
2.税率だけで決めると痛い目を見る理由
社会保険料が実質2倍に!
法人化すると、社会保険に加入することが義務とされています。
社会保険料は会社と本人が半分ずつ負担することになっていて、料率は15%ずつ(合計30%)で、本人の額面給与に乗じて算出します。
しかし社長の場合、会社=自分なので、会社負担分も結局自分の財布から出ていくことになります。
一般の会社員なら会社が半分持ってくれるところを、社長は労使折半の両方を自分で払ってるようなもの・・・実質2倍払ってるんです。。。
赤字でも年7万円の均等割がかかる点も、じわじわ効いてきます。
インボイス前提だと消費税メリットも薄い
以前は「法人化すれば設立後2年間は消費税が免税になる」というメリットがよく語られてました。
でも今はインボイス登録がほぼ前提になっているので、この2年免税を使える場面自体がかなり少なくなっています。
むしろ個人事業主のまま2027年・2028年分については、2割特例の後継である3割特例が使えます(これは個人事業主限定で、法人化すると使えなくなる措置です)。
つまり「法人化=消費税でお得」という発想、今はもうそのまま鵜呑みにできないんですよね。
包み隠さず言いますが、ちなみに税理士報酬も、個人事業より法人の方が高くなります。決算が複雑になる分ですね、ここも地味にコスト増の一因になるかと思います。
3.個人事業主のままでいい人の特徴
▪利益がまだ800万円のラインに届いていない方は、そもそも急ぐ必要ありません。
▪国保から社保に変わる影響がある方
国民健康保険には扶養という概念がないので、今は家族の収入を気にせず保険料を払ってるはず。
でも法人化して社会保険に入ると、家族を扶養に入れられる代わりに、扶養の範囲(いわゆる130万円の壁など)を気にする必要が出てきます。
家族の働き方によっては、ここが地味に面倒なポイントになるので要チェックです。
▪事務作業を増やしたくない方
記帳や社会保険手続きなど、これ以上事務作業を増やしたくない方にとっても、個人事業主の方がシンプルです。
▪そして3割特例が使える2027・2028年分に関しては、個人のままでいた方が消費税面でも得するケースが出てきます。
4.それでも早めに法人化した方がいいケース
インボイス対応とは別に、業種によっては「法人の方が取引先から信用されやすい」というケースがあります。
融資や資金調達を本格的に考えている場合も、法人の方が圧倒的に有利で選択肢が広がります。
こういうケースは利益額とは別軸の話なので、「戦略として法人化する」という判断になります。
まとめ
「利益800万円」はあくまで税率だけを見た入口の目安です。
社会保険料の負担、事務作業の増加、そして今はもうインボイス前提で薄れてしまった消費税メリットまで含めて考える必要があります。
特に2027・2028年分は個人事業主のままだと3割特例が使えるので、この2年間はあえて法人化を急がない、という判断も十分アリだと思います。
まずはご自身の課税所得と、法人化した場合の社会保険料負担を並べて比べてみるところから始めてみましょう!
また、税制も執筆時点のものになっており、記事によってはその後の法改正が反映されていない可能性がありますのでご注意ください。
◆個別・単発の税務相談を承っております。自分の状況に合わせて相談したい!という方はこちらへ↓
個別・スポット相談
足立区北千住の『佐藤崇税理士事務所』
小さな会社様(従業員数5名以下)、フリーランス・個人事業主様に特化して税務サービスを提供しています。
■ 佐藤崇のプロフィール
■ 個別・スポット相談
■ 顧問契約_法人・会社
■ 顧問契約_フリーランス・個人事業主
■ 執筆・取材・出演のご依頼
■ 税理士受験生と税法大学院について語り合う会
■ はじめての会社_入門記事まとめ
