課税の繰り延べ?会社の節税で入る生命保険は税金の免除ではありません。

 

 

 

 

法人で節税のため生命保険に入るケース多くあります。

まとまった金額を経費にすることができますし、簡単な健診を受けるだけで時間的にもそんなにかからず加入することができますから使い勝手がいいんですね。

当初予定の税金より生命保険加入、保険料支払いした時点で経費になり税金が減りますから、多少なり税金から解放された社長としてはやれやれ何とか節税できて当期も終わったと一安心することだと思います。

 

そこで「課税の繰り延べ」ってご存知ですか?

生命保険は支払っただけでは節税にはなりません。単なる課税の繰り延べなんです。

これがあるため生命保険は保険料を支払っただけで終わりではなく解約のことも考えておかなければなりません。

解約時の出口戦略は本当に本当に重要ですが、そもそもなぜ解約時のことを想定しておかなければならないのか。

その理由は「課税の繰り延べ」というしくみにあります。

 

 

課税の繰り延べ

 

課税の繰り延べというのは、当期支払うべき税金を将来に先延ばしするということです。

税金が免除されて、もう払わなくていいということではありません。

納税を将来に先延ばししているだけですので、その将来がきた時点で本来支払うべきだった税金を納めることとなるんです。

 

例えば年間保険料1000万円で、半額損金の法人保険に加入した場合、毎年500万円が損金になります。

損金≒経費です。《参考》【生命保険超入門】全額損金と半額損金の違い

500万が経費になるということは法人税率を35%とすると175万の税金が一旦減額されます。

この175万の税金を支払うのが当期ではなく将来に先延ばしされたということです。

 

ここで間違いや勘違いが生じていることが多いです。

175万税金が減った=175万の節税=この175万は払わなくていい(税金の免除)

そうではなく、当期は175万支払わなくていいけど、将来175万払ってねということなんです。

なぜ当期は175万支払わなくていいけど、将来175万払わなければならないんでしょう(課税の繰り延べ)

 

 

生命保険は解約したときに収益になる

 

課税の繰り延べ、当期は175万支払わなくていいけど将来175万払わなければならないことになるのはなぜなんでしょう。

それは生命保険を解約するとキャッシュが戻ってきますがそのキャッシュが収益になるからなんです。

収益−経費=利益

収益が増えれば利益も増えます。保険料を支払っている間は保険料という経費が計上されますのでその分税金が減っています(課税の繰り延べ)が、解約すると保険料の支払いはストップされ貯めてきたキャッシュが戻ってきて収益になり、その分税金が増えるということです。

 

金額を当てはめてもう少し詳しくすると、

 

先ほどのように年間保険料1000万円で半額損金の法人保険に加入した場合、毎年500万円が経費になります。

そしてこの保険を10年間掛けていくと総額保険料が1億円に達します。

つまり10年間で5000万円損金になり同額の5000万円が資産計上ということですね。

この間に一時的にいくら税金が減ったかというと経費に入る500万の税率35%で175万、この10年分なので1750万です。

このケースで10年目に解約をして返戻率が100%で1億円の解約返戻金を受け取ると、元々経費として計上していた5000万円が収益として法人税の対象となってしまいます。

5000万の収益ですから税率35%で1750万の税金がかかるということです。

保険料を払っていた10年間で総額1750万の税金を先延ばししていたということになりますね。

 

 

まとめ

 

生命保険は節税(税金の免除)ではなく、課税の繰り延べ(先延ばし)という仕組みにフォーカスして書いてみました。

生命保険は解約時の出口戦略が重要というのは散々言われていることですが、そもそもなぜそんなことが言われているのか。

その理由はこの課税の繰り延べにあるんですね。

保険は加入して保険料を支払っただけでは本当の節税にはなっていません。

保険の提案を受けたときにはここの部分をしっかりと意識しておきたいですね。

 

 

 

《参考記事》

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◆この記事は執筆時点の想いをもとに書いています。
また、税制も執筆時点のものになっており、記事によってはその後の法改正が反映されていない可能性がありますのでご注意ください。



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